2026.09.08 18:48

「AIを使える人」と「マーケター」の違い

生成AIの進化によって、マーケティングの仕事は大きく変わり始めています。文章を書く、広告コピーを考える、企画のアイデアを出す、競合を整理する、データを分析する、提案資料をつくる。これまでマーケターが多くの時間を費やしてきた仕事を、AIが驚くほど短い時間で処理できるようになりました。マーケティングの現場でも「AIを使える人材を育てよう」という声を聞く機会が増えています。もちろん、AIを使えることはこれからのマーケターに必要な能力です。数年後にはWordやExcelと同じように、AIを使えること自体は特別ではなくなっているかもしれません。今回は「AIを使える人」と「マーケター」は違うことについてをお伝えいたします。お時間ある際にぜひお読みくださいませ。

ただ、ここで考えておきたいことがあります。「AIを使える人」と「マーケティングができる人」は、必ずしも同じではないということです。AIに「新商品のキャッチコピーを20案考えて」と依頼すれば、数秒で案が出てきます。「この商品のマーケティング戦略を考えて」と入力すれば、ターゲットやポジショニング、販促施策まで整理してくれます。

しかし、本当に難しいのはその先です。

どのコピーがお客様に届くのか。このターゲット設定は正しいのか。競合と比較して、そのポジショニングで勝てるのか。そして、その施策に会社のお金と人を投入するべきなのか。

AIは選択肢を大量につくれます。しかし、「この会社、この商品、このお客様なら、これでいこう」と判断することは、マーケターの重要な仕事として残ります。

通販の現場を考えると、より分かりやすいでしょう。広告のCPAが悪化したとき、AIに数字を読み込ませれば原因の仮説はいくつも出てきます。しかし実際には、商品の価格なのか、クリエイティブなのか、オファーなのか、競合環境なのか。あるいは新規獲得ではなく、その後のCRMや継続率に問題があるのかもしれません。

さらに会社には、予算、人員、経営者の考え、営業や制作との関係、過去の経緯など、さまざまな事情があります。「正しい施策だから、すぐ実行できる」とは限りません。マーケティングは、正解を知っていればできる仕事ではありません。限られた条件の中で、何を優先し、誰と話し、どこから動かしていくのかまで考えて初めてマーケティングになる。私達はそう考えています。

だからこそ、AI時代には「問いを立てる力」が重要になります。「売上を上げる方法を考えて」ではなく、「なぜ新規顧客は増えているのに利益が残らないのか」「なぜ初回購入者が2回目に進まないのか」「この商品の本当の競合は誰なのか」。問いの質によって、AIから返ってくる答えも大きく変わります。そして良い問いは、現場を知らなければなかなか生まれません。

お客様の声を聞いた経験。広告を出して失敗した経験。売れなかった商品を改善した経験。営業や制作と意見を交わした経験。経営者から「それで本当に利益が出るのか」と問われた経験。そうした積み重ねから、「もしかすると問題はここではないか」という仮説が生まれます。

AIが普及すると経験が不要になるのではありません。むしろ、誰でも一定水準のアウトプットをつくれるようになるほど、その良し悪しを判断できる人の価値が高くなるのではないでしょうか。つまり、これから必要なのは「AIか、人間か」という議論ではありません。

マーケティングができる人が、AIを使うこと。

顧客を理解する。数字を見る。仮説を立てる。優先順位を決める。経営とマーケティングをつなぐ。そして社内外の人たちと対話しながら、実際に施策を動かしていく。そのプロセスをAIによって速く、深くしていく。AIはマーケターを不要にするものではなく、マーケターの能力を何倍にも拡張してくれる存在です。一方で、AIがつくったものをそのまま資料に貼り付け、もっともらしい企画を提出するだけでは、マーケターとしての価値は徐々に薄れていくでしょう。その作業自体は、誰でもできるようになるからです。

これからのマーケター育成も、AIツールの操作方法を教えるだけでは不十分です。「なぜそう考えたのか」「誰のための施策なのか」「この数字から何を感じたのか」と問い続け、自分で考え、判断する力を育てる必要があります。AIが答えを出してくれる時代だからこそ、人間は問いを持たなければならない。そして最後に意思決定し、人を動かし、結果に向き合うのは人間です。AIを使えるマーケターではなく、マーケティングができる人がAIを使う。顧客と事業を理解し、自分なりの仮説を持ち、判断し、実行する。その土台があって初めて、AIは本当の意味でマーケティングの武器になるのではないでしょうか。自社の状況はいかがでしょうか。まずは一度チェックしてみてください。何か見えてくることがあるかもしれません。

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最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

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ダイレクトマーケティングプランナー 石井 孝典

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