通販企業のマーケティング支援をしていると、「もっと広告予算があれば売上を伸ばせる」という現場の声と、「その投資で本当に利益が残るのか」という経営側の声に、少し距離があると感じることがあります。さらにその声の温度感の差が、マーケティングの動きを停滞させる深刻な原因になることも。今回はマーケティング部門をコスト部門にしないために必要な経営視点についてをお伝えいたします。お時間ある際にぜひお読みくださいませ。

マーケティング担当者にとって、CPAやROAS、CVR、売上、LTVなどは重要な指標です。しかし経営者が見ているのは、その数字だけではありません。売上から粗利はいくら残るのか、広告費や人件費を差し引いて利益はいくらになるのか、投資した資金をいつ回収できるのか。そして、その顧客が半年後、1年後にどれだけ事業へ貢献してくれるのか。マーケティングの数字を「経営の数字」までつなげて見ています。
例えば広告施策によって売上が伸び、CPAも目標を達成したとしても、原価や物流費、制作費などを含めると利益がほとんど残っていないのであれば、経営から見た評価は変わります。反対に、新規獲得時点では利益が出ていなくても、その後の継続購入によって十分な利益が見込めるのであれば、それは将来への有効な投資になります。特に通販事業では、こうした視点は欠かせません。とはいえ、マーケティングスタッフに「もっと経営視点を持とう」と伝えるだけで、簡単に変わるものでもありません。
現場には現場の役割があります。毎月の売上目標があり、広告の入稿があり、制作物の進行があり、キャンペーンの準備があり、日々追わなければならないKPIがあります。その状況で「会社全体の利益まで考えよう」「3年後の事業を考えよう」と言われても、頭では理解できても、日常業務の中で実践することは簡単ではありません。
だからこそ必要なのは、個人の意識だけに頼らない「仕組み」だと思います。例えば、マーケティングの定例会議でCPAや売上だけを報告するのではなく、粗利やLTV、継続率、投資回収期間なども一緒に確認する。月次の数字についても、「目標を達成した・しなかった」だけではなく、「なぜこの数字になったのか」「この結果が半年後の利益にどう影響するのか」「次にどこへ投資すべきなのか」まで議論する。経営会議で話されている内容の一部をマーケティングスタッフにも共有し、会社が今どこを目指し、何を課題としているのかを理解する機会をつくることも大切です。
さらに、マーケティングの企画書や施策提案のフォーマット自体を変える方法もあります。「何をやるのか」「いくらかかるのか」だけではなく、「何を目的とするのか」「どの数字を改善するのか」「どのくらいの期間で投資を回収するのか」「事業全体にどんな効果をもたらすのか」まで記載する。こうしたフォーマットを繰り返し使うことで、自然と経営視点で施策を考える習慣が身についていきます。
また、経営側にも役割があります。マーケティングスタッフに経営視点を求めるのであれば、経営数字や事業方針を可能な範囲で共有しなければなりません。情報を持たせずに「経営者目線で考えてほしい」と求めても、それは難しいでしょう。経営とマーケティングの距離を縮めるためには、マーケターが経営に近づくだけではなく、経営側もマーケティングの現場に情報を渡し、対話する場をつくる必要があります。
経営視点を持つマーケターは、一朝一夕には育ちません。しかし、見る数字を変える、会議を変える、企画書を変える、共有する情報を変える。このような小さな仕組みの積み重ねによって、少しずつ「施策を考える人」から「事業を考える人」へと変わっていきます。
マーケティング部門を「お金を使う部門」から「会社の成長をつくる部門」へ。そのために必要なのは、個人に経営視点を求めることだけではなく、マーケティングスタッフが経営視点を持てる環境と仕組みを、会社としてつくっていくことです。自社の状況はいかがでしょうか。まずは一度チェックしてみてください。何か見えてくることがあるかもしれません。
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